
チェスの戦術問題とは、実際の対局から取った局面で、一方が強制的に勝ちを決められるものです。メイトするか、駒得をします。相手がもう何をしても助からない一手を見つけるのが課題です。
BB Gymの問題は、Lichessの公開データベースから取っています。局面はLichessで指された対局から抜き出され、すべての解答はチェスエンジンで確認済みです。各問題にはレーティングがあり、プレイヤーがどれだけ解けたかで決まります。数値が高いほど難しい問題です。
ゲームの流れ
1回のセッションは10局面です。局面が表示され、相手が一手指すと、すぐにあなたの番になります。盤の横には、手番、問題の番号、時計が表示されます。
レベルは3つです。やさしいはレーティング400〜1000の問題で、1問90秒。ふつうは1000〜1500で120秒。むずかしいは1500〜2000で150秒です。セッションの中では、やさしい問題から難しい問題へと進みます。
すべてのテーマを混ぜて解くことも、1つを選ぶこともできます。1手メイト、2手メイト、フォーク、ピン、スキュアー、浮き駒、ディスカバードアタック、バックランクメイトです。
挑戦は1回だけです。間違えるとその問題は終わり、正しい解答が表示されます。手数の多い問題では相手が自動で応じ、あなたが続けて指します。メイトであれば、データベースと違う手でも正解になります。
駒はドラッグしても、駒をタップしてから行き先のマスをタップしても動かせます。最終段に着いたポーンは、選んだ駒に昇格します。
得点のしくみ
1セッションの満点は1000点で、各問題の配点は同じです。配点の3分の2は正解で、残りは速さで決まります。残り1秒で解いた問題でも、別の問題で時間を縮めるより多くの点になります。急いで間違えるのは得になりません。
セッションのあとで各問題を開き直し、局面、自分の手、正しい解答を確認できます。
主な戦術テーマ
フォーク:一手で2つの駒を同時に攻め、相手は1つしか救えません。ナイトのフォークが有名ですが、ポーン、クイーン、キングでもフォークはできます。
ピン:後ろにより価値の高い駒やキングがあるため、駒がそのラインから動けない状態です。後ろがキングなら、ルール上そのピンされた駒は動かせません。
スキュアーはピンの逆です。価値の高い駒が攻撃され、それがよけると、同じライン上の後ろにある価値の低い駒が取られます。
浮き駒とは、どの駒にも守られておらず、そのまま取れる駒のことです。こうした問題で、相手が何かを守らずに残していないか確かめる習慣がつきます。
ディスカバードアタック:駒が動くことで、後ろにいる別の駒のラインが開きます。そのラインがキングに向いていればディスカバードチェックです。相手はまずキングを守らなければならず、その間に動いた駒は好きな駒を攻撃できます。
バックランクメイトは、自分のポーンの後ろに閉じこもったキングに決まります。ルークかクイーンが1段目か8段目に入り、キングには逃げるマスがありません。
1手メイトと2手メイトの問題では、目的は駒得ではなくメイトです。2手の問題では、最初の手は静かな手や犠牲であることが多く、チェックはかけませんが、そのあと相手はメイトを防げなくなります。
手の探し方
指導者は、強制力のある手から考えるよう勧めます。チェック、駒取り、直接の脅しです。相手の応手が最も少ないので、最後まで読みやすいからです。
相手のどの駒が守られていないか、相手のキングがどこにいるかを見てください。問題の最初に相手が指した手もヒントです。その手で何かが弱くなっていることがよくあります。
指す前に、相手の最善の応手を見つけてください。派手でも相手に逃げられる手では、問題は解けません。
挑戦は1回だけなので、当てずっぽうで速く指すより、確認に時間を使うほうが得です。速さは各問題の得点の3分の1にすぎません。
研究からわかること
オランダの心理学者でチェスマスターでもあったアドリアン・デ・フロートは、さまざまな強さのプレイヤーに局面を見ながら考えを声に出してもらい、1946年に結果を発表しました。グランドマスターが検討した手の数は、強いクラブプレイヤーと大きくは変わりませんでした。違いは、どの手が頭に浮かぶかでした。強いプレイヤーほど、正しい手をすぐに思いつくことが多かったのです。
1973年、ウィリアム・チェイスとハーバート・サイモンは、プレイヤーに局面を5秒間見せて再現してもらいました。実戦の局面では、マスターは初心者よりはるかに正確に再現しましたが、駒をでたらめに並べた局面ではその差はほとんど消えました。経験のあるプレイヤーは駒を1つずつではなく、見慣れた駒の組み合わせとその関係として覚えています。指導者が生徒に戦術問題をたくさん解かせるのはこのためです。見慣れたパターンは、読むよりも早く見つかります。
チェスで人が全般的に賢くなるかどうかは、別の問題です。ジョバンニ・サラとフェルナン・ゴベによる2016年のメタ分析は、学校でのチェスの授業に関する研究をまとめ、算数と読解に中程度の効果を見いだしましたが、その多くは設計の弱い研究でした。2017年に同じ著者たちはチェス、音楽、ワーキングメモリ訓練を比べ、研究の設計が丁寧なほど効果が小さくなることを示しました。結論は、訓練した課題から遠い課題に能力が移ることはまれだ、というものです。
2016年の別のメタ分析では、チェスの実力と認知能力に正の関係があることがわかりました。ただし、このようなデータからは、どちらが原因でどちらが結果なのかはわかりません。ですから、これらの問題はチェス戦術そのものの練習と考えるのが正直です。BB Gymの結果は心理学的な診断ではありません。
こんな人に
やさしいレベルは、駒の動かし方を知っていて、簡単な戦術を見抜けるようになりたい人向けです。ふつうとむずかしいでは問題が長くなり、テーマが組み合わさります。犠牲のあとのフォークや、ディスカバードチェックのあとのメイトなどです。
指導者は、決まった問題セットへのリンクを生徒に渡せます。全員が同じ局面を解くので、結果を比べやすくなります。
出典
- Lichess puzzle database (CC0)
- A. D. de Groot. Thought and Choice in Chess. 2nd ed., 1978
- W. G. Chase, H. A. Simon. Perception in chess. Cognitive Psychology, 4(1), 55–81, 1973
- G. Sala, F. Gobet. Do the benefits of chess instruction transfer to academic and cognitive skills? A meta-analysis. Educational Research Review, 18, 46–57, 2016
- G. Sala, F. Gobet. Does far transfer exist? Negative evidence from chess, music, and working memory training. Current Directions in Psychological Science, 26(6), 515–520, 2017
- A. P. Burgoyne et al. The relationship between cognitive ability and chess skill: A comprehensive meta-analysis. Intelligence, 59, 72–83, 2016